
毎日新聞2025/5/23 21:00

トランプ米政権がハーバード大学の外国人留学生受け入れ資格を停止すると発表し、大学側は反発を強めている。日本人留学生の間でも不安が広がっており、卒業生の日本人研究者は「科学の発展にも影響する」と懸念を示す。
「反エリート」姿勢と大学への「改革」圧力
トランプ米政権が名門大学への圧力を強めるのは、行き過ぎたリベラルの価値観の拠点とみなしているからだ。支持基盤向けに「反エリート」の立場を強調しつつ、収入源を断つことで政権の意向に沿った「改革」を進める意図がある。政権側は、留学生の受け入れ禁止のほかにも補助金の凍結や大学の非課税資格の取り消しなどの措置をちらつかせ、ハーバード大執行部を揺さぶる。
「学問の自由」をかけて抵抗を続ける名門大学は、財政上の危機を持ちこたえることができるのか。
ハーバード大は、政権の「改革要求」を拒んだとしてこれまでに26億ドル(約3740億円)以上の複数年にわたる補助金などを凍結されている。日本で、優れた研究計画を選んで国が支給する科学研究費助成事業(科研費)の1年分の総額を上回る規模だ。
ハーバード大の2024会計年度の報告書によると、大学の収入のうち民間を含む外部資金の割合は16%だった。外部資金のうち連邦政府からの補助金は68%と多くを占め、世界最大の研究費配分機関である国立衛生研究所(NIH)を抱える厚生省が主要な提供元となっている。このため学部別では公衆衛生、医学、工学・応用科学で外部資金への依存度がより高い。
研究者への影響
ハーバード大医学部では、全身の筋力が低下する難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」を研究するデービッド・ウォルト教授ら複数の研究者が厚生省から即時に業務をやめるようメールで通告された。…